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名古屋高等裁判所 昭和46年(ネ)20号 判決 1972年11月29日

控訴人(付帯被控訴人) 柴田順三

右訴訟代理人弁護士 大脇松太郎

同 大脇保彦

同 大脇雅子

同 内河恵一

被控訴人(付帯控訴人) 尾関しず江

<ほか六名>

右七名訴訟代理人弁護士 島田英樹

同 杉本昌純

主文

被控訴人らの付帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

控訴人は、被控訴人尾関しず江に対し、金二二六万八二六四円および内金一六六万八二六四円に対する昭和四三年一一月四日から支払いずみまで年五分の割合による金員を、被控訴人尾関信一、同尾関きく江、同加藤みはる、同尾関保六、同園原みゑ、同園原よし子に対し、各金七四万四四四三円およびこれに対する昭和四三年一一月四日から支払いずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

被控訴人らのその余の請求を棄却する。

控訴人の本件控訴を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審を通じこれを五分し、その三を控訴人、その二を被控訴人らの負担とする。

この判決は、被控訴人ら勝訴部分に限り執行することができる。

事実

控訴人訴訟代理人は、「原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らの付帯控訴に対し付帯控訴棄却の判決を求めた。

被控訴人ら訴訟代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求め、付帯控訴として、「原判決中被控訴人ら勝訴部分を除きその余を取り消す。控訴人は、被控訴人尾関しず江に対し金三九六万一一六二円および内金三三六万一一六二円に対する昭和四三年一一月四日から支払いずみまで年五分の割合による金員を、被控訴人尾関信一、同尾関きく江、同加藤みはる、同尾関保六、同園原みゑ、同園原よし子に対し各金一一一万五三六四円およびこれに対する昭和四三年一一月四日から支払いずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。訴訟費用は第一、二審を通じ控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張および証拠の提出・援用・認否は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同じであるから、これを引用する。

(控訴人の主張)

一、過失割合について

原判決は、本件事故の発生について、加害者たる控訴人と被害者たる訴外亡尾関清十との過失の割合を七対三としたが、右の判断は不当であり、これを五対五とすべきである。

すなわち、被害者は本件事故の際、酒三升を入れた籠を背負い、婦人用自転車に乗って、かなり不安定な状況で進行していた。しかも、同人の右目は義眼であったから、右折の際に右後方を確認するには障害となったはずであり、右のように籠を背負っていればその障害はさらに著しかったといわなければならない。しかるに、被害者は、後方の安全を全く確認することなく、右折の合図もしないで、衝突地点(乙第四号証添付図面その二記載の×地点)の約四メートル手前において、突然道路の左端から斜め右に進路を転じ、控訴人の進路に進入したのである。被害者の自転車の前輪の軸に衝突痕が残っていることは、被害者が急に右折しなければ生じ得ないことである。

これに対して、控訴人は、被害者が道路の左側線の内側(中央線寄り)を進行しているのを発見し、そのまま進行できると思い、ハンドルをやや右に切って進行を続けた。ところが、被害者は何の合図もせずに、突然右折したのである。したがって、控訴人が一瞬目をそらせたことは、被害者の発見やその動静を見誤った過失につらなる原因にはならない。本件事故現場は、村道との交差点であったが、被害者が右折して進入しようとしていた村道は、表示も標識もなく、建物の位置等からして、控訴人の進行方向からはその存在をはっきり確認し得なかったもので、被害者が進路を転じて中央線付近に近接して来ることを予想することは困難であった。

以上の点を考慮すれば、本件事故における過失割合は五対五とするのが相当である。

二、稼働年数について

原判決は、本件事故当時五六歳の被害者の稼働年数を六五歳までの九年間としたが、裁判例の傾向からみて、右が長きに失することは明らかである。

三、養鶏による所得について

原判決は、養鶏(ブロイラー)による被害者の所得を年間七五万六〇〇〇円と認定したが、右は、ブロイラーが一時的にブームを起こした時期の年間収入を基準としており、右収入が将来まで続くことの推定は存しない。近年ブロイラーは不況であり、原判決の認定した収入はとうてい望み得ない。

しかも、原判決が右認定の基礎とした甲第一〇号証(昭和四一年の所得証明)および同第四号証(昭和四二年の所得証明)に記載された所得額は、乙第六号証の四に記載の所得額とは著しく差異がある(右乙号証は申告所得額を記載したものである。)。

したがって、原判決の右認定は誤りである。

四、恩給所得について

被害者は、本件事故当時、増加恩給二一万五五六七円の支給を受けていたが、被控訴人尾関しず江は、被害者の死亡により遺族扶助料年額八万六二七三円を受給することになったから、被害者の恩給受益を喪失したことによる損害額は、その差額の金一二万九二九四円とならなければならない。

すなわち、そもそも増加恩給所得は、遺族扶助料に化体したものと考えるべきである。遺族扶助料は、公務員であった者が死亡してはじめて受給しうるものであり、増加恩給は右の者の死亡によって支給が停止されても、遺族扶助料という形に変って遺族の収入となるのである。両者は、いわゆる一般年金制度としてその生活補償金的性格は同一であるから、一体として取り扱われてしかるべきである。本件において、被控訴人尾関しず江が遺族扶助料の支給を受けているのは、妻が受給権者として法定されているからにすぎない。

したがって、原判決のように、一たん増加恩給の全額を被害者の損害とし、これを被控訴人らが相続したものとしたうえで、被控訴人尾関しず江についてのみ、年間所得中の逸失利益に占める恩給所得の割合によって損害を算定するのは、控訴人に不当な負担を課するもので、誤った方法である。正確には、被害者の取得すべき増加恩給の総額(中間利息を控除した現価)について過失割合に基づき控訴人負担分を特定し、これからその間に取得すべき遺族扶助料の総額(中間利息を控除した現価)を控除して実損害を算出し、しかるのち、各人の相続分に応じて按分すべきである。

五、弁護士費用について

被控訴人らは当審において、審級ごとになされた報酬契約に基づいて弁護士費用を請求しているが、弁護士に対する報酬は、審級別に契約がなされるものではないから、右請求については、一・二審を通じて適正な確定額が認定されなければならない。

(被控訴人らの主張)

一、原判決は、本件事故について被害者にも過失があったとしているが、右判断は不当である。

本件事故における衝突地点(衝突の際の被害自転車の位置)は、乙第四号証添付図面その二記載の×地点ではなく、それより数メートル南方に寄った地点であり、かつ、ほぼ外側線上かあるいはその若干外側であった。右の×地点は、加害自動車の走行車線の中央部分よりさらに道路の中心線寄りになっている(同図面記載①の地点での加害自動車の中心部より右方に当たる。)が、そのような地点にまで、被害自転車が出て来るようなことは考えられない。

仮に、衝突地点が右の×地点であるとした場合、被害者は、その付近から、村道大前線に進入するため右折しようとしたのではないかとも考えられる。しかし、右の村道には、被害者の親戚で対立関係にある訴外宮下丈三の家があり、生前において絶対通行しなかったものであるから、被害者が右の地点において右折することはあり得なかった。

要するに、本件事故は、専ら控訴人の前方不注視の過失により生じたものであって、被害者に過失の一端を負わせることはとうてい許されない。

二、養鶏による所得について

乙第六号証の四に記載の所得額が、控訴人主張のように申告にかかるものであることは認める。甲第一〇、第四号証記載のブロイラーによる所得は、非申告所得であるが、昭和四一年については甲第一五号証により、同四二年については甲第一六号証により、それぞれ収支決算が合致していることが明らかであり、いずれの年においても、甲第一〇、第四号証記載のブロイラーによる所得があったものである。

三、慰藉料について

原判決認定の慰藉料額は、合計すると金二三〇万円になるが、右金額は、被害者の過失を考慮しても著しく不当に低い。被害者に過失がなければ、その不当性はなお一層著しい。

四、弁護士費用について

被控訴人尾関しず江は、本件訴訟の提起と追行を原審における訴訟代理人に委任し、手数料および謝金として金四〇万円の支払いを約し、内金一〇万円を支払い、また原判決宣告後、控訴人の控訴提起に対する防ぎょおよび被控訴人らの付帯控訴の提起と追行を当審における訴訟代理人に委任し、手数料および謝金として金二〇万円の支払いを約し、内金五万円を支払った。

これらは、本件事故と相当因果関係に立つ損害であり、控訴人は被控訴人尾関しず江に対して右の合計金六〇万円を支払う義務があるので、同被控訴人は当審において請求を拡張し、右の金員の支払いを求める。

五、第一審原告尾関岩助の死亡による相続分

第一審原告尾関岩助は昭和四四年七月一三日死亡したので、被控訴人らは、同人の慰藉料請求権金四〇万円を相続により承継取得した。被控訴人らの取得額は、法定相続分の割合により、被控訴人尾関しず江において金一三万三三三三円、その余の被控訴人らにおいて各金四万四四四四円である。そこで、被控訴人らは当審において請求を拡張し、右の各金員の支払いを求める。

(証拠関係)≪省略≫

理由

一、本件事故の発生状況、およびその結果、ならびに事故当事者双方の過失についての当裁判所の認定・判断は、次のとおり付加するほか、原判決理由第一(原判決八枚目裏一〇行目から一一枚目表五行目まで)に説示するところと同じであるから、これを引用する。

1  被控訴人らは、本件事故における衝突地点は、乙第四号証添付図面その二に記載の×地点より数メートル南方に寄った地点であったと主張し、当審証人牧野英敏、同宮下丈三の各証言中には右の主張に符合する部分がある。しかしながら、原審証人小松晋策の証言ならびに右牧野および宮下各証人の供述の一部によれば、本件事故現場において実況見分を実施した警察官は、単に加害者である控訴人の指示説明のみによらず、現場にのこされたスリップ痕、ガラスの破片の散乱状況および酒のこぼれた痕跡等をつぶさに観察し、これらに基づいて衝突地点を確認し、その結果、前記の図面を作成したことが認められる。そして、右図面における距離関係等の記載からみて、加害自動車と被害自転車とが同図面記載×地点において衝突したということは、十分肯認することができる。前記牧野および宮下各証人も、衝突の状況を目撃したのではなく、事故後現場にのぞんで酒のこぼれた痕跡から衝突地点を推測したというにすぎない。そして、右の痕跡の位置については、前記小松証人の証言および乙第四号証添付図面その二の記載を措信するのが相当であり、牧野および宮下各証人の供述のうち、被控訴人らの前記主張にそう部分は採用できない。

また、右図面における事故前の加害者および被害者の進行状況、相互の位置関係、衝突地点および衝突後の被害者の転倒地点に至る経路等の記載によれば、被害者は、本件事故の直前において進路を右前方に転じたものと認めざるを得ない。

2  被控訴人らは、もし衝突地点が右図面に記載の×地点であったとすれば、被害者は国道の東側の村道大前線に進入するために右折しようとしたとしか考えられないが、被害者が右村道を通行することは絶対にあり得ないことであったと主張し、≪証拠省略≫中には、右主張にそう部分がある。しかしながら、本件事故の前後における状況および衝突地点につき右に述べたところと、原判決の判示するところを総合すると、被害者が、本件事故の直前において、進路を右前方に転じたことは否定し得ないところであり、被害者の平素の通行状況に関する前記の≪証拠省略≫によっても、右判断を動かすことはできない。

3  ≪証拠省略≫によれば、原判決判示のように、控訴人は被害者の右側を追い抜こうとして直進したが、衝突の直前において、一瞬被害者の動静から目を離した事実が認められる。当審における控訴人本人尋問の結果中には、右認定とやや異なり、控訴人は最初被害者の後姿を発見した際、右に寄って追い越そうとして進行し、衝突の直前において被害者が右側に寄って来たのを確認したが、ついに避け切れなかった旨供述する部分があるが、右乙号各証の記載に照らし措信できない。

また、≪証拠省略≫によると、被害者の右目は失明していたことが認められ、なお被害者は、本件事故の際籠を背負っていたことは、原判決認定のとおりである。したがって、被害者が、右後方を確認するのに多大の困難を伴ったことは明らかであるから、進行方向の右側に進路を転ずるにあたっては、一たん停止する等して、後方の安全を十分に確認するぐらいの慎重な運転方法が要求されるのは当然である。しかるに、被害者は、何ら後方の安全を確認することなく、突然進路を右前方に転じたのであるから、本件事故の発生について、被害者にも過失があることは明らかである。

しかしながら、控訴人が、前示のように、衝突の直前に一瞬被害者の動静から目を離したことは、前方注視義務を尽くさなかったものとして、重大な過失があると称すべきである。

4  以上述べたところによれば、本件事故の発生について、被害者と控訴人との過失の割合を三対七とした原判決の判断は、相当としてこれを首肯することができる。

二、本件事故による損害は、次のとおりである。

1  逸失利益

この点に関する当裁判所の判断は、左のように付加するほか、原判決理由第二の一(原判決一一枚目表七行目から一五枚目表二行目まで)に説示するところと同じであるから、これを引用する。

(一)  控訴人は、乙第六号証の四の記載を根拠として、原判決認定の養鶏による所得は過大であると主張する。しかしながら、右乙号証は、控訴人の自認するとおり申告された所得に関するものであり、一般に申告にかかる所得は必ずしも実際の収入に合致しないものであるから、これと異なる収入のあることが明らかであれば、現実の収入に基づいて逸失利益を算定することは、何ら妨げないというべきである。しかるところ、≪証拠省略≫によれば、被害者の養鶏による収入は、昭和四一年において金八〇万四六五三円、昭和四二年において金七〇万八三三六円であったことが認められる。そして、これらが臨時の収入であったことを認めるべき証拠もないから、その平均値である金七五万六〇〇〇円をもって被害者の生前の収入とした原判決の判断は、相当というほかない。

(二)  控訴人は、被害者の恩給所得についての逸失利益に関し、原判決の採用した算定方法は誤りであると主張する。

ところで、国の公務員であった者に対して支給される普通恩給もしくは増加恩給(以下、単に恩給という。)と、恩給権者の死亡によりその遺族に対して支給される扶助料との間には、(イ)恩給権者に家族がある場合には、恩給は単に恩給権者本人のみならず、その者の収入に依存する家族に対する生活保障の目的を有するという点において、扶助料とその目的を同一にし、また、(ロ)恩給権者の死亡によって恩給受給権は消滅するが、以後遺族に対して扶助料が支給されるため、両者は同時に併存することはできぬという関係がある。したがって、これらの関係を実質的にみれば、控訴人の主張するように、扶助料は恩給の化体したものであるという説明もし得ないではない。しかしながら、恩給法は、遺族の全部に対して扶助料を支給するという立場をとらず、扶助を受ける順位を定めており(同法七三条)、右の順位は、死亡した恩給権者との親等の遠近および依存の程度等を考慮すれば、これを妥当視すべき実質的根拠を有すると解せられる。

本件においては、被害者の妻である被控訴人尾関しず江が、第一順位の受給権者として扶助料の支給を受けているのであるから、右扶助料は、同被控訴人についてのみ損益相殺の対象として考えるべきである。控訴人の主張するように、扶助料が遺族全体に支給されるものとして、被控訴人ら全員についてこれを損益相殺の対象とすることは、右の法律の定めを無視するもので、相当でない。

したがって、被害者が死亡したため恩給の支給を受けられなくなったことによる損害賠償の請求権は、被害者に帰属した権利として、被控訴人ら全員につき相続分に応じて相続されるが、扶助料の受給による損益相殺は、被控訴人尾関しず江についてのみこれをすべきである。

もっとも、右損益相殺による減縮の程度については、同被控訴人が今後平均余命期間の全部を通じて受けるべき扶助料の総額を現価に引きなおして、その全額を同被控訴人の相続した恩給喪失による逸失利益の額から控除するのが本来であるが、もともとこの場合扶助料額を控除するというのは、厳密な意味での損益相殺には当たらず(交通事故による損害の発生と扶助料受給の利益とは、その発生原因において同一でない。)、むしろ衡平の原理に立脚する要請であるから、相続した逸失利益の中に占める扶助料の額の割合が、被害者の年間所得の中に占める恩給の額の割合を越える場合には、その超過部分まで控除すべきでなく、後者の割合の限度で控除金額を制限するのが相当である。

そうすると、原判決が恩組喪失による逸失利益の額を算定するにあたり、右の趣旨にそう方法を採用したことは、妥当として是認さるべきである。

2  慰藉料

この点に関する当裁判所の判断は、次のとおり付加するほか、原判決理由第二の二(原判決一五枚目表三行目から一〇行目まで)に説示するところ(ただし、そこに「原告岩助」とあるのを「訴外亡岩助」と読み替えるものとする。)と同じであるから、これを引用する。

(一)  被控訴人らは、原判決認定の慰藉料の額を低額に過ぎると主張するが、原判決挙示の各種の事情、とりわけ本件事故における過失割合を考慮すれば、右認定は相当と考えられる。

(二)  ≪証拠省略≫によると、訴外尾関岩助は、昭和四四年七月一三日に死亡したことが認められる。したがって、同人の慰藉料請求権は相続人によって相続されることになる。

ところで、≪証拠省略≫によれば、右岩助の妻は相続開始前に既に死亡しているので、その子である尾関清十およびタカ(昭和一一年四月四日楯健一と婚姻届出)が右岩助を相続すべきところ(その他の子はいずれも、幼くして死亡している。)、清十は相続開始前に死亡しているから、右請求権の二分の一は右タカにおいて相続し、二分の一は、清十の子である被控訴人みはる、信一、保六、みゑ、よし子、きく江において各六分の一(右請求権全体の一二分の一)の割合で代襲相続すべきことになる。したがって、同被控訴人らの取得すべき価額は、原判決認定の金二〇万円の一二分の一に当たる金一万六六六六円となる。

被控訴人尾関しず江は、右につき三分の二の相続分を主張するが、同被控訴人が亡岩助の権利を相続すべき根拠は何ら存しない。また、その余の被控訴人らが、右認定の相続分を超えて右岩助の権利を相続したことを認めるに足りる証拠はない。

3  弁護士費用

以上述べたところによれば、被控訴人らは控訴人に対し、尾関しず江において金一六六万八二六四円、その余の被控訴人らにおいて各金七四万四四四三円の支払いを求めうべきものであり、その合計は金六一三万四九二二円となる。

そして、≪証拠省略≫によると、被控訴人尾関しず江が本訴の提起・追行を原審における訴訟代理人と当審における訴訟代理人に委任し、手数料および謝金として前者に金四〇万円、後者に金二〇万円支払う旨約したことが認められる。

本件事案の内容および訴訟追行の難易の程度等を考慮すると、被控訴人らが本件につき弁護士を代理人として委任したことはやむを得ないことと考えられ、前記認容額からすると、本件事故による損害として控訴人の負担に帰せしむべき弁護士費用は、金六〇万円をもって相当と考えられる。そして、右しず江は、同人の請求分についてのみでなく、被控訴人ら全員のために前記の金員の支払いを約したものと認めるべきであるから、同人は被控訴人に対して右の金六〇万円を請求しうるものである。

三、結論

以上の次第であるから、被控訴人らの本訴請求は、被控訴人尾関しず江において、金二二六万八二六四円、およびそのうち弁護士費用を除いた金一六六万八二六四円に対する本件事故の日の翌日である昭和四三年一一月四日から支払いずみまで民事法定利率年五分の割合による金員の支払いを求め、その余の被控訴人らにおいて、各金七四万四四四三円、およびこれに対する右同日から支払いずみまで右同率による金員の支払いを求める限度において正当であるから、これを認容すべきであるが、その余は失当として棄却すべきである。

そこで、被控訴人らの付帯控訴に基づき原判決を変更し、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山口正夫 裁判官 宮本聖司 新村正人)

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